ぶにんりしょうき
夫人利生記

冒頭文

瑠璃色(るりいろ)に澄んだ中空(なかぞら)の樹(こ)の間から、竜が円い口を張開いたような、釣鐘の影の裡(なか)で、密(そっ)と、美麗な婦(おんな)の——人妻の——写真を視(み)た時に、樹島(きじま)は血が冷えるように悚然(ぞっ)とした。…… 山の根から湧(わ)いて流るる、ちょろちょろ水が、ちょうどここで堰(いせき)を落ちて、湛(たた)えた底に、上の鐘楼の影が映るので、釣鐘の清水と言うので

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成8
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年5月23日第1刷