はるのふ
春の賦

冒頭文

一 また春が帰つて来た。 病にかかつてこのかた、暑さ寒さが今までになくひどく体にこたへるので、夏が来ると秋を思ひ、冬になると春を恋しがる以外には、何をも知らない私は、ことしの冬が近年になく厳しからうとの前触れがやかましかつただけに、まだ冬至も来ないうちからどれほど春を待ちかねたことか。とりわけこの三、四年、病気と闘ふ気分のめつきり衰へてきた私は、自分の病躯(びやうく)に和やかな、触

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 泣菫随筆
  • 冨山房百科文庫、冨山房
  • 1993(平成5)年4月24日