にっき 01 せんきゅうひゃくじゅうさんねん(たいしょうにねん) |
日記 01 一九一三年(大正二年) |
冒頭文
七月二十一日 晴 木の葉のしげみや花ずいの奥にまだ夜の香りがうせない頃に目が覚めた。外に出る。麻裏のシットリとした落つきも、むれた足にはなつかしい。 この頃めっきり広がった苔にはビロードのやわらかみと快い弾力が有ってみどりの細い間を今朝働き出してまだ間のない茶色の小虫が這いまわって居るのも、白いなよなよとした花の一つ二つ咲いて居るのまで、はっきりした頭と、うるみのない輝いた眼と
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 宮本百合子全集 第二十三巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年5月20日