ハイネがどこかで
ハイネが何処かで

冒頭文

ハイネが何處かで、自分は獨逸人の頑固なのは大嫌ひだが、獨逸語は大好きだ、詩の言葉としては世界中で一番美しいだらうといふやうな意味の事を言つてゐたと記憶する。 この頃、僕も獨逸語がすつかり好きになつてしまつた。しかし僕の獨逸語ときたら、少年の頃、習つたきりなのでほとんど忘れてしまつてゐるが、それでも辭書を引きさへすれば、どうやら意味ぐらゐは通じる。そんな興味も手つだつてか、この頃獨逸語の本

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文藝 第二巻第九号」1934(昭和9)年9月号

底本

  • 堀辰雄作品集第五卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年9月30日