「えほん」 |
「絵本」 |
冒頭文
もう十數年前のことである。小林秀雄と永井龍男とがはじめて出合つた時の話である。 小林が先づ永井に「君は志賀直哉を讀むか?」と聞いた。「うん、好きだ」と永井は即座に答へた。「ぢや、佐藤春夫はどうだ?」と小林が再び聞いた。「ああいふのも好きだ」と永井は答へた。そのとき永井はいくらか微笑を浮かべはしなかつたかと私は想像する。それから二人は大いに意氣相投じたさうである。 こんど四季社か
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「四季 創刊号」1934(昭和9)年10月15日
底本
- 堀辰雄作品集第五卷
- 筑摩書房
- 1982(昭和57)年9月30日