(アンデルゼンの「そっきょうしじん」) |
(アンデルゼンの「即興詩人」) |
冒頭文
又四五日前から寢込んでゐる。どうも春先きになるといけない。いつもきつと得體の知れない熱が出るのである。 ⁂ 僕は本箱から鴎外の「即興詩人」を引つぱり出して見た。病氣をするとこの本を手にとるのがいつの間にやら習慣みたいになつてゐる。もう何遍目だか知れない。それだのに又しても讀んで行くうちに、僕はこのロマネスクな物語の中に引きずり込まれてしまふ。このアンデルゼンの小説だと
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「本 第一号」1933(昭和8)年4月30日
底本
- 堀辰雄作品集第五卷
- 筑摩書房
- 1982(昭和57)年9月30日