(あくたがわりゅうのすけのしょかんについて)
(芥川竜之介の書翰に就いて)

冒頭文

僕はこの頃、芥川龍之介書翰集(全集第七卷)を讀みかへした。そしてちよつと氣のついたことがあるから、それを喋舌つて見たい。 芥川さんは brilliant な座談家だつたさうである。さういふどこか才氣煥發といつたやうな風貌は大正七、八年頃の書翰の中にうかがはれないことはない。しかし、さういふ芥川さんは僕のすこしも知らない芥川さんだ。 又、芥川さんは風流人だつたさうである。なるほど

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「帝国大学新聞」1932(昭和7)年9月26日

底本

  • 堀辰雄作品集第五卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年9月30日