きがちたいをあるく ――とうほくのうそんさんじょうほうこくしょ――
飢餓地帯を歩く ――東北農村惨状報告書――

冒頭文

一 また雪が降り出した。もう一尺五寸、手の指も足の指もちぎれそうだ。しかし俺は喰いものをあさりに、一人山へ登って行く。俺はいつも、男だ男だと思って、寒さを消しながら、夢中で山から山をあさって歩く。 これは、青森県のある新聞に載せてあったもので、或る農村——八甲田山麓の村の一青年の詩である。詩としての良し悪しはここでは問題としない。只、この短かい詩句の中から、大飢饉に見舞われたこの地方の百姓達の、

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1932(昭和7)年2月号

底本

  • 土とふるさとの文学全集 7
  • 家の光協会
  • 1976(昭和51)年7月20日