みず〔とびらのことば〕
水〔扉の言葉〕

冒頭文

禅門——洞家には『永平半杓の水』という遺訓がある。それは道元禅師が、使い残しの半杓の水を桶にかえして、水の尊いこと、物を粗末にしてはならないことを戒められたのである。そういう話は現代にもある、建長寺の龍淵和尚(?)は、手水をそのまま捨ててこ(ママ)まった侍者を叱りつけられたということである。使った水を捨てるにしても、それをなおざりに捨てないで、そこらあたりの草木にかけてやる、——水を使えるだけ使う

文字遣い

新字新仮名

初出

「「三八九」第三集」1931(昭和6)年3月30日

底本

  • 山頭火随筆集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2002(平成14)年7月10日