ねどこ〔とびらのことば〕
寝床〔扉の言葉〕

冒頭文

ここへ移って来てから、ほんとうにのびやかな時間が流れてゆく。自分の寝床——それはどんなに見すぼらしいものであっても——を持っているということが、こんなにも身心を落ちつかせるものかと自分ながら驚ろいているのである。 仏教では樹下石上といい一所不住ともいう。ルンペンは『寝たとこ我が家』という。しかし、そこまで徹するには悟脱するか、または捨鉢にならなければならない。とうてい私たちのような平々凡

文字遣い

新字新仮名

初出

「「三八九」第壱集」1931(昭和6)年2月2日

底本

  • 山頭火随筆集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2002(平成14)年7月10日