てつばちとぎょらんと ――ごちゅうにっきから――
鉄鉢と魚籃と ――其中日記から――

冒頭文

九月三日。 曇、さすがに厄日前後らしい天候。 朝は梅茶三杯ですます。身心を浄化するには何よりもこれがよろしい。 前栽の萩——それは一昨年黎々火君と共に裏山から移植したもの——が勢よく伸びて、びっしり蕾をつけている。早いのはぽつぽつ咲きだしている。萩は何となく好きな花だが、それは山萩にかぎる。葉にも花にも枝ぶりにも私たち日本人を惹きつけるものがある。 このごろ

文字遣い

新字新仮名

初出

「層雲 昭和十年十月号」1935(昭和10)年10月

底本

  • 山頭火随筆集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2002(平成14)年7月10日