さんぱくざっき
三八九雑記

冒頭文

なんとなく春めいてきた、土鼠(もぐら)がもりあげた土くれにも春を感じる。 水のいろも春めいたいもりいつぴき 私もこのごろはあまりくよくよしないようになった。それはアキラメでもなければナゲヤリでもない、むろんサトリでもない、いわば、老のオチツキでもあろうか。 近眼と遠眼とがこんがらがってきたように、或は悠然として、或は茫然として、山を空を土を眺めることができるようになっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「「三八九」第六集」1933(昭和8)年2月28日

底本

  • 山頭火随筆集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2002(平成14)年7月10日