くだけたかわら (あるおとこのてちょうから)
砕けた瓦 (或る男の手帳から)

冒頭文

私は此頃自から省みて『私は砕けた瓦だ』としみじみ感ぜざるをえないようになった。私は瓦であった、脆い瓦であった、自分から転げ落ちて砕けてしまう瓦であったのだ。 玉砕ということがあるが、私は瓦砕だ。それも他から砕かれたのではなくて、自から砕いてしまったのだ。見よ、砕けて散った破片が白日に曝されてべそを掻いている。 既に砕けた瓦はこなごなに砕かれなければならない。木端微塵(こっぱみじ

文字遣い

新字新仮名

初出

「層雲 大正三年九月号」1914(大正3)年9月

底本

  • 山頭火随筆集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2002(平成14)年7月10日