かたすみのこうふく
片隅の幸福

冒頭文

大の字に寝て涼しさよ淋しさよ 一茶の句である。いつごろの作であるかは、手もとに参考書が一冊もないから解らないけれど、多分放浪時代の句であろうと思う。とにかくそのつもりで筆をすすめてゆく。—— 一茶は不幸な人間であった。幼にして慈母を失い、継母に虐められ、東漂西泊するより外はなかった。彼は幸か不幸か俳人であった。恐らくは俳句を作るより外には能力のない彼であったろう。彼は句を作った

文字遣い

新字新仮名

初出

「愚を守る 初版本」1941(昭和16)年8月

底本

  • 山頭火随筆集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2002(平成14)年7月10日