あかいつぼ(さん)
赤い壺(三)

冒頭文

物を弄ぶのはその物の真髄を知らないからである。理解は時として離反を齎(もた)らすけれど、断じて玩弄というような軽浮なものを招かない。 鏡を持たない人は幸福である。その人は自分が最も美しいと信じきっている。私はそういう見すぼらしい幸福を観るにも堪えない。 自己を愛するということは自己に侫(おも)ねることではない、自己に寛大であることではない。真に自己を愛するものは、自己に対して最

文字遣い

新字新仮名

初出

「層雲 大正五年三月号」1916(大正5)年3月

底本

  • 山頭火随筆集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2002(平成14)年7月10日