きょうし
教師

冒頭文

此の中學へ轉任してからもう五年になる。子供が三人出來た。三人共男ばかりである。此の外には自分に何の變化も無い。依然として理化學の實驗を反覆して居る。自分は一體褊狹な人間なのであらう、同僚ともそんなに往復はない。田舍の教師抔といふものはてんでみじめな情ない人間が聚合して居るに過ぎない。俸給の不足だとか同僚に對する嫉妬の惡評だとかいふことを能く口にしたがる。それを聞くのが自分には厭なのだ。然し生徒は好

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「ホトトギス 第十三卷第一號」1909(明治42)年10月1日

底本

  • 長塚節全集 第二巻
  • 春陽堂書店
  • 1977(昭和52)年1月31日