さしおさえられるはなし
差押へられる話

冒頭文

私は、所得税に対して不服であつた。附加税をよせると、年に四百円近くになる。私は官吏や実業家のやうに、国家の直接な恩恵を受けてもゐないのに、四百円は、どんな意味からでも、取られすぎると思つた。文士など云ふ職業は、国家が少しも歓待もしなければ、保護奨励もしない。奨励しないどころか、発売禁止だとか上演禁止だとかで脅してゐながら、その上収入に対して、普通の税率を課するのは、怪(け)しからないと思った。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻57 喧嘩
  • 作品社
  • 1995(平成7)年11月25日