はんしちとりものちょう 43 やなぎわらどてのおんな
半七捕物帳 43 柳原堤の女

冒頭文

一 なにかの話から、神田の柳原の噂が出たときに、老人はこう語った。 「やなぎ原の堤(どて)が切りくずされたのは明治七、八年の頃だと思います。今でも柳原河岸の名は残っていて、神田川の岸には型ばかりの柳が植えてあるようですが、江戸時代には筋違橋(すじかいばし)から浅草橋までおよそ十町のあいだに高い堤が続いていて、それには大きい柳が植え付けてありましたから、春さきの眺めはなかなかよかったもの

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(四)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年8月20日