| さどがしまをでて  | 
| 佐渡が島を出て 02 | 
冒頭文
佐渡が島を出てからひと月あまりになりました。白山神社の附近にたんぼがあつて赤蛙を取りに行つた東京、傳通院のぐるりが草原で蜻蛉やおおとを取りに行つた東京、あの附近に銘酒屋があつて、今日なくなつてしまつた「およなはいよ」と言ふ言葉で客をよんでゐた頃、お米屋さんがばたりばたりと足で踏んで米を搗いて居た頃、その前に鷄がくつくと鳴いてこぼれたのを拾つてゐた頃、前輪だけの馬鹿に大きな自轉車がよくうちの前のどぶ
文字遣い
 旧字旧仮名 
 初出
 「明星 」「明星」發行所、1926(大正15)年7月 
 底本
- 明星
- 「明星」發行所
- 1926(大正15)年7月