ようねんじだい |
幼年時代 |
冒頭文
無花果(いちじく)のある家 私は自分の幼年時代の思い出の中から、これまで何度も何度もそれを思い出したおかげで、いつか自分の現在の気もちと綯(な)い交ぜになってしまっているようなものばかりを主として、書いてゆくつもりだ。そして私はそれらの幼年時代のすべてを、単なるなつかしい思い出としては取り扱うまい。まあ言ってみれば、私はそこに自分の人生の本質のようなものを見出(みいだ)したい。 私
文字遣い
新字新仮名
初出
「むらさき」1938(昭和13)年9月号、10月号、11月号、1939(昭和14)年1月号、3月号、4月号
底本
- 幼年時代・晩夏
- 新潮文庫、新潮社
- 1955(昭和30)年8月5日発行、1970(昭和45)年1月30日16刷改版