なんぶのはなまがり
南部の鼻曲り

冒頭文

これからする話を小説に書いてくれないかね、と玉本寿太郎がいった。 玉本は開戦初期の比島戦でトムプソン銃にやられて左脚を四分の三ほど短くされたが、終戦後は、じぶんからなんとか局の通訳を買って出て、毎日いそがしそうにしている。 「まあ、やめておく」と私がいうと彼は、「みょうなやつだな、終いまで聞きもしないで。君はいつか『日本人としても立派な日本人は、アメリカ人になっても立派なアメリカ人になるだろ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1946(昭和21)年2月

底本

  • 昆虫図
  • 現代教養文庫、社会思想社
  • 1976(昭和51)年12月15日