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冒頭文

この集を一讀して先づ私の感じたのは、著者土岐哀果氏が蓋し今日無數の歌人中で最も歌人らしくない歌人であらうといふ事であつた。其の作には歌らしい歌が少い——歌らしい歌、乃ち技巧の歌、作爲の歌、裝飾を施した歌、誇張の歌を排するといふ事は、文學上の他の部面の活動の後を引いて最近一二年の間に歌壇の中心を動かした著るしい現象であつたが、然し我々は自らそれを唱へた人の作に於ても、多作の必要乃至其他の理由から、往

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「東京朝日新聞」1910(明治43)年8月3日

底本

  • 啄木全集 第十卷
  • 岩波書店
  • 1961(昭和36)年8月10日