ふおん
不穏

冒頭文

其日も、私は朝から例の氣持に襲はれた。何も彼も興味が失せて、少しの間も靜かにしてゐられないやうに氣が苛々(いら〳〵)してゐた。新聞を見ても少し長い記事になると、もう五六行讀んだ許りで、終末(しまい)まで讀み通すのがもどかしくなつて、大字(だいじ)の標題(みだし)だけを急がしく漁(あさ)つた。續き物の小説などは猶更讀む氣がしなかつた。 さうして、莨(たばこ)に火をつけて何本も何本も喫(す)

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 啄木全集 第十卷
  • 岩波書店
  • 1961(昭和36)年8月10日