にんげんのひあい
人間の悲哀

冒頭文

人間の悲哀とは、自己の範圍を知ることである。生れ落ちた時、私は何も知らなかつた。その時何の悲しみがあつたらう。經驗と教育とは日一日と私の、自己及自己以外の事物に關する知識を廣くし、深くした。——私は日一日と、自己の範圍といふものを一劃々々知つてゆく樣になつた。 何の自由、何の領土が人間にある? 自己の範圍といふものは、知れば知る程小さくなつてゆく、動きのとれぬものになつてゆく。 常に何

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 啄木全集 第十卷
  • 岩波書店
  • 1961(昭和36)年8月10日