むぎわらぼうし |
麦藁帽子 |
冒頭文
私は十五だった。そしてお前は十三だった。 私はお前の兄たちと、苜宿(うまごやし)の白い花の密生した原っぱで、ベエスボオルの練習をしていた。お前は、その小さな弟と一しょに、遠くの方で、私たちの練習を見ていた。その白い花を摘んでは、それで花環(はなわ)をつくりながら。飛球があがる。私は一所懸命に走る。球(たま)がグロオブに触(さわ)る。足が滑(すべ)る。私の体がもんどり打って、原っぱから、田
文字遣い
新字新仮名
初出
「日本國民」日本國民社、1932(昭和7)年9月号
底本
- 燃ゆる頬・聖家族
- 新潮文庫、新潮社
- 1947(昭和22)年11月30日発行、1970(昭和45)年3月30日26刷改版