たんていしょうせつだんのしょけいこう
探偵小説壇の諸傾向

冒頭文

一 『カラマーゾフ兄弟』のような小説を読むと、誰でも少なくも二日や三日は、作品の世界からぬけきれないで、平凡極まる自分の生活がいやになるに相違ない。ロシアの近代思想を縦横に解剖してゆく検事の論告に読みふけっている最中に、「どうだい近頃は」というような、この上ないコンベンショナル型にはまったな話しかたをしかけるものがあったら、その瞬間には、相手の男がどんなに大学者であっても、まるで煉瓦(れんが

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年 第七巻第三号新春増刊号・探偵小説傑作集」1926(大正15)年2月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日