なぞのおんな
謎の女

冒頭文

一 左手には三浦半島から房総半島の淡い輪郭が海の中に突きだしている。 右手には伊豆半島の東側の海岸線が鋸歯(きょし)状に沖へ伸びている。 正面には大島が水平線に浮いて見え、遥か手前には、初島がくっきりと見える。 すぐ眼(め)の下には、熱海駅前の雑踏や、小学校のグランドに飛びまわっている子供らの声が、雲雀(ひばり)の囀(さえず)るように聞こえる。 龍

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年 第一三巻第一号」1932(昭和7)年1月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日