なつのよのぼうけん
夏の夜の冒険

冒頭文

これは一九三〇年型の実話ではなくて、ごく古風な実話である。 今から十年ほど前私は内幸町(うちさいわいちょう)のある会社につとめていた。その会社には、共産党の市川正一君、文芸戦線の青野季吉(すえきち)君、大竹博吉君のロシア問題研究所の仕事をしている時国(ときくに)理一君、外務省の板倉君、日日新聞の永戸(ながと)君なども一しょにはたらいていたのだ。 その当時、時国は中里にすんでいた

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学時代 第二巻第九号」新潮社、1930(昭和5)年9月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日