はなやかなざいか
華やかな罪過

冒頭文

一 「貴方(あなた)が人殺しをして、生々しい血糊で汚れた手を妾(わたし)に見せておまけに『俺は盗みもしてきたんだよ、つい一分前まで、仲よく話していた友達を、いきなり絞め殺して、そいつの懐から、ほらこの通り蟇口(がまぐち)をぬきとってきたんだ』なんて言いながら、ほんとうに血だらけな手でその蟇口を自慢そうに妾の眼(め)の前へぶら下げてみせたとしたら、妾は貴方を憎めるでしょうか? 怖気(おじけ)を

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝日 一巻九号」1929(昭和4)年9月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅰ〔論創ミステリ叢書1〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年10月10日