ふたつのぶんがくろん
二つの文学論

冒頭文

ごく最近に私は二つの文学論を読んだ。一つはドイツのマルクス主義者フランツ・メーリングの文学論を川口浩氏が編訳した「世界文学と無産階級」という書物で、いま一つは、イギリスでショーと並び称せられた特色ある批評家チェスタトンの「探偵小説擁護論」(『新青年』所載)である。 前者の巻頭の「芸術とプロレタリアート」という論文の一節に「現代芸術が非常に悲観的な特徴をもっているのに反し、近代のプロレタリ

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日新聞」1929(昭和4)年1月30日

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日