らんぽしのしょさく
乱歩氏の諸作

冒頭文

江戸川乱歩氏の作を『新青年』所載「悪夢」と「孤島の鬼」と二つ読んだ。 「悪夢」は氏の旧作「白昼夢」などとともにグロテスクをねらった作品である。四肢も耳も口もつぶれて、肉塊のような存在となっている廃中尉とその細君との変態的性生活を描いたものである。江戸川氏の想像力の怪異さはある意味で、世界の文学にも類例のない程のもので、この作品でも、そういう人間を性的享楽の対象に考えだしたいうことは私たちを驚

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日新聞」1929(昭和4)年1月5日

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日