わたしのようきゅうするたんていしょうせつ
私の要求する探偵小説

冒頭文

私も以前にはだいぶ探偵小説を耽読(たんどく)したことがあった。四五年前までは新本でも丸善で二十五銭で買えた菊版の六片版(シックスペンスエディション)を十銭位で古本屋からあさってあるいたこともあった。黒岩涙香の二三十冊もある翻案物を、神楽坂の貸本屋から次々にかりてきて一ヶ月かそこいらで大部分読んでしまったこともあったが、近頃は仕事が忙しいので余り探偵小説を読んでいるひまがない。それでも病気などになっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年 第五巻第一〇号夏期増刊号・探偵小説傑作集」1924(大正13)年8月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日