オパールいろのてがみ ――あるおんなのにっき――
オパール色の手紙 ――ある女の日記――

冒頭文

四月十三日 こんなことが信じられるだろうか? でもじっさい妾(わたし)は自分の眼で見たのだ。あの人が、世界でたった一人の妾の人だと信じきっていたあの人が、全く世間並みの、やくざな、汚らわしい人間であったなんて。 今朝の十時に、妾はあの人の書斎へはいって、書棚からミロッセの『コンフェッション』を探していた。すると、何という偶然の一致だろう。ちょうど、その書物をぬき出すとたんに、オパール色

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学時代 一巻五号」1929(昭和4)年9月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅰ〔論創ミステリ叢書1〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年10月10日