ヂユパンのくせとヴァンスのくせ
ヂユパンの癖とヴァンスの癖

冒頭文

デュパンという男は申すまでもなくポーの小説に出てくる探偵である。もっともこの探偵の出てくる小説は、「モルグ街の殺人」と「盗まれた書類」と「マリー・ロジェ奇談」とこの三つしかない。探偵小説には必ず探偵が必要であるというヴァン・ダインの筆法から言うと、ポーの探偵小説は三つしかないわけだ。 デュパンは、ホームズやルパンなどの紳士とは非常に変わった探偵である。パリのサン・ジェルマンの物淋しい、怪

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年 第一一巻第一一号夏季増刊号・新選探偵小説傑作集」1930(昭和5)年8月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日