じさつかたさつか
自殺か他殺か

冒頭文

一 「兄さん、こう暑くては、まったく頭がぼんやりするねえ」 少年科学探偵塚原俊夫君は、ある日の午後、実験室で、顕微鏡を見ていた顔をあげて私に言いました。七月になってから急に暑さが増して、二三日は華氏九十度近くに達しましたから、俊夫君が、このような嘆声を発するのも無理はありません。 「君の頭でも、ぼんやりすることがあるのかね?」 と、私は、別に皮肉を言うつもりでなく尋ねました

文字遣い

新字新仮名

初出

「少年倶楽部 一四巻一一号」1927(昭和2)年11月号

底本

  • 小酒井不木探偵小説選 〔論創ミステリ叢書8〕
  • 論創社
  • 2004(平成16)年7月25日