ゆきのうえのあしあと
雪の上の足跡

冒頭文

主 やあ、どこへ行ったかと思ったら、雪だらけになって帰って来たね。 学生 林の中を歩いて来ました。雑木林の中なぞは随分雪が深いのですね。どうかすると、腰のあたりまで雪の中に埋まってしまいます。獣(けだもの)の足跡が一めんについているので、そんな上なら大丈夫かとおもって、足を踏みこむと、その下が藪(やぶ)になっていたりして、飛んだ目に逢ったりしました。 主 君と、兎なんぞが一しょになるものかね。

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1946(昭和21)年3月号

底本

  • 昭和文学全集 第6巻
  • 小学館
  • 1988(昭和63)年6月1日