やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路

冒頭文

樹下 その藁屋根(わらやね)の古い寺の、木ぶかい墓地へゆく小径(こみち)のかたわらに、一体の小さな苔蒸(こけむ)した石仏が、笹むらのなかに何かしおらしい姿で、ちらちらと木洩れ日に光って見えている。いずれ観音像かなにかだろうし、しおらしいなどとはもってのほかだが、——いかにもお粗末なもので、石仏といっても、ここいらにはざらにある脆(もろ)い焼石、——顔も鼻のあたりが欠け、天衣(てんね)など

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 昭和文学全集 第6巻
  • 小学館
  • 1988(昭和63)年6月1日