ほこりはかたる
塵埃は語る

冒頭文

誘拐 今年の夏は近年にない暑さが続きましたが、九月半ばになると、さすがに秋風が立ちはじめて、朝夕はうすら寒いくらいの気候となりました。わが少年科学探偵塚原俊夫君は、八月に胃腸を壊してからとかく健康がすぐれませんでしたが、秋になってからはすっかり回復して元気すこぶる旺盛、時々、私に向かって、 「兄さん、何かこうハラハラするような冒険はないかなあ。僕は近頃腕が鳴って仕様がない」

文字遣い

新字新仮名

初出

「子供の科学 四巻五号、五巻一~二号」1926(大正15)年12月~1927(昭和2)年2月号

底本

  • 小酒井不木探偵小説選 〔論創ミステリ叢書8〕
  • 論創社
  • 2004(平成16)年7月25日