あらしのよる
暴風雨の夜

冒頭文

一 秋も酣(たけなわ)なる十一月下旬のある夜、××楼の二階で、「怪談会」の例会が開かれた。会員は男女五人ずつ併せて十人、百物語の故事にならって、百という数の十分の一に相当する十人が毎月一回寄合っての怪談会である。 今夜はF君が、最近手に入れたという柳糸堂(りゅうしどう)の「拾遺御伽婢子(しゅういおとぎぼうこ)」の原本を持って来て、面白そうな物語を片っ端から読みあげたが、そのうち

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談倶楽部」1926(大正15)年1月号

底本

  • 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2002(平成14)年2月6日