くぎぬきとうきちとりものおぼえがき 05 おちゃづけおんど
釘抜藤吉捕物覚書 05 お茶漬音頭

冒頭文

一 「はいっ。」 「はいっ。」 「ほらきた!」 「よいとこら!」 「はっ。」 「はっ。」 庄屋よ狐よ猟師よと拳にさざめく夕涼み。本八丁堀三丁目、海老床(えびどこ)の縁台では、今宵、後の月を賞めるほどの風雅(みやび)はなくとも、お定例(きまり)の芋、栗、枝豆、薄(すすき)の類の供物(くもつ)を中に近所の若い衆が寄り合って、秋立つ夜の露っぽく早や四つ過ぎたのさえ忘れていた。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 一人三人全集Ⅰ時代捕物釘抜藤吉捕物覚書
  • 河出書房新社
  • 1970(昭和45)年1月15日