なおこ
菜穂子

冒頭文

楡の家 第一部 一九二六年九月七日、O村にて 菜穂子、 私はこの日記をお前にいつか読んで貰うために書いておこうと思う。私が死んでから何年か立って、どうしたのかこの頃ちっとも私と口を利こうとはしないお前にも、もっと打ちとけて話しておけばよかったろうと思う時が来るだろう。そんな折のために、この日記を書いておいてやりたいのだ。そういう折に思いがけなくこの日記がお前

文字遣い

新字新仮名

初出

「菜穂子」は「楡の家」(第一部・第二部)と「菜穂子」の二篇から成る。「楡の家」第一部:「物語の女」山本書店(「物語の女」の表題で。)1934(昭和9)年11月、「楡の家」第二部:「文学界」(「目覚め」の表題で。)1941(昭和16)年9月号、「菜穂子」:「中央公論」1941(昭和16)年3月号

底本

  • 昭和文学全集 第6巻
  • 小学館
  • 1988(昭和63)年6月1日