くぎぬきとうきちとりものおぼえがき 08 むみょうのよる
釘抜藤吉捕物覚書 08 無明の夜

冒頭文

一 「あっ! こ、こいつぁ勘弁ならねえ。」 いの一番に傘を奪られた勘弁勘次、続いて何か叫んだが、咆える風、篠(しの)突く雨、雲低く轟き渡る雷に消されて、二、三間先を往く藤吉にさえ聞き取れない。が、 「傘あ荷厄介だ。」 こう藤吉が思った瞬間、一陣の渦巻風が下から煽(あお)って、七分にすぼめて後生大事にしがみついていた藤吉の大奴を、物の見事に漏斗形(じょうごがた)に逆さに吹き上げた

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 一人三人全集Ⅰ時代捕物釘抜藤吉捕物覚書
  • 河出書房新社
  • 1970(昭和45)年1月15日