くぎぬきとうきちとりものおぼえがき 11 かげにんぎょう
釘抜藤吉捕物覚書 11 影人形

冒頭文

一 三十間堀の色物席柳江亭(りゅうこうてい)の軒に、懸け行燈が油紙に包まれて、雨に煙っていた。 珍しいものが掛っていて、席桟敷は大入り満員なのだった。人いきれとたばこで、むっとする空気の向うに、高座の、ちょうど落語(はなし)家の坐る、左右に、脚の長い対(つい)の燭台の灯が、薄暗く揺れて、観客のぎっしり詰まった場内を、影の多いものに見せていた。 扇子を使いたい暑さだったが、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 一人三人全集Ⅰ時代捕物釘抜藤吉捕物覚書
  • 河出書房新社
  • 1970(昭和45)年1月15日