くぎぬきとうきちとりものおぼえがき 13 ちゅうにうくむくろ
釘抜藤吉捕物覚書 13 宙に浮く屍骸

冒頭文

一 空はすでに朝。 地はまだ夜。 物売りの声も流れていない。 深淵を逆さに刷くような、紺碧(こんぺき)のふかい雲形——きょう一日の小春日を約束して、早暁(あかつき)の微風は羽毛のごとくかぐわしい。 明け六つごろだった。朝の早い町家並びでも、正月いっぱいはなんと言っても遊戯心地(あそびごこち)、休み半分、年季小僧も飯炊きも、そう早くから叩き起されもしない

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 一人三人全集Ⅰ時代捕物釘抜藤吉捕物覚書
  • 河出書房新社
  • 1970(昭和45)年1月15日