はやみみさんじとりものききがき 02 うしべにさんご
早耳三次捕物聞書 02 うし紅珊瑚

冒頭文

一 人影が動いた、と思ったら、すうっと消えた。 気のせいかな、と前方(まえ)の暗黒(やみ)を見透しながら、早耳三次が二、三歩進んだ時、橋の下で、水音が一つ寒々と響き渡った。 はっとした三次、欄干へ倚って下を覗いた。大川の水が星を浮かべて満々と淀み、𣏾(くい)を打って白く砕けている。その黒い水面を浮きつ沈みつ、人らしい物が流れていた。 「や、跳びやがったな!」

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 一人三人全集Ⅰ時代捕物釘抜藤吉捕物覚書
  • 河出書房新社
  • 1970(昭和45)年1月15日