おばすて
姨捨

冒頭文

わが心なぐさめかねつさらしなや をばすて山にてる月をみて          よみ人しらず 一 上総(かずさ)の守(かみ)だった父に伴なわれて、姉や継母などと一しょに東(あずま)に下っていた少女が、京に帰って来たのは、まだ十三の秋だった。京には、昔気質(むかしかたぎ)の母が、三条の宮の西にある、父の古い屋形に、五年の間、ひとりで留守をしていた。 そこは京の中とは思えない

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋」1940(昭和15)年7月号

底本

  • 昭和文学全集 第6巻
  • 小学館
  • 1988(昭和63)年6月1日