かぜたちぬ
風立ちぬ

冒頭文

Le vent se lève, il faut tenter de vivre. PAUL VALÉRY 序曲 それらの夏の日々、一面に薄(すすき)の生い茂った草原の中で、お前が立ったまま熱心に絵を描いていると、私はいつもその傍らの一本の白樺の木蔭に身を横たえていたものだった。そうして夕方になって、お前が仕事をすませて私のそばに来ると、それからしばらく私達は肩に手をかけ

文字遣い

新字新仮名

初出

序曲、風立ちぬ「改造」1936(昭和11)年12月号、冬「文藝春秋」1937(昭和12)年1月号、春「新女苑」1937(昭和12)年4月号、死のかげの谷「新潮」1938(昭和13)年3月号

底本

  • 昭和文学全集 第6巻
  • 小学館
  • 1988(昭和63)年6月1日