こどもやくしゃのし
子供役者の死

冒頭文

ペテロは三たびキリストを知らずといえり。——これはそんなむずかしい話ではありませんと、ある人は語った。 なんでも慶応の初年だと聞いていました。甲州のなんとかいう町へ、江戸の子供役者の一座が乗り込んだのです。十七八をかしらに十五六から十二三ぐらいの子供ばかりで、勿論たいした役者でもなかったのですが、その頃のことですから、ともかくもお江戸の役者が来たというので、初日のあく前から大変な人気で、

文字遣い

新字新仮名

初出

「子供役者の死」隆文館、1921(大正10)年3月

底本

  • 文藝別冊[総特集]岡本綺堂
  • 河出書房新社
  • 2004(平成16)年1月30日