かげろうのにっき
かげろうの日記

冒頭文

なほ物はかなきを思へば、あるかなきかの心地する かげろふの日記といふべし。                    蜻蛉日記 その一 半生も既に過ぎてしまって、もはやこの世に何んのなす事もなく生きながらえている自分だが、——一たい顔かたちだって人並でないし、これと云った才能もあるわけではないのだから、こんな風にはかない暮しをしているのも尤(もっと)もの事だとは思うものの、只こうや

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1937(昭和12)年12月号

底本

  • 昭和文学全集 第6巻
  • 小学館
  • 1988(昭和63)年6月1日