なほ物はかなきを思へば、あるかなきかの心地する かげろふの日記といふべし。 蜻蛉日記 その一 半生も既に過ぎてしまって、もはやこの世に何んのなす事もなく生きながらえている自分だが、——一たい顔かたちだって人並でないし、これと云った才能もあるわけではないのだから、こんな風にはかない暮しをしているのも尤(もっと)もの事だとは思うものの、只こうや