えどがわらんぽ
江戸川乱歩

冒頭文

御大典の当時、全国の警察が警戒網を布いて、怪しい挙動風体の者はいちいち検挙拘引していた頃のこと、伊勢の方面へ旅行中であった、江戸川乱歩が突如その筋の取り調べを受けたということである。というのは彼は、昼間のうちは寝ていて、夜になるとうろうろ歩きまわるので挙動不審だというので宿の者が警察へそっと密告したためだったそうである。東京でも浅草公園で夜を明かしたりすることは珍しくないということだ。『一寸法師』

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮 第二七年第一号」1930(昭和5)年1月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日